生活の集合体
他人の生活を垣間見るのが好きだ。
…変態ではない。
例えば、夕方の帰り道。
ふわりと香るカレーの香り。
シャワーの音。
ベランダに顔を出し、洗濯物を取り込む人。
生活が、街のあちこちに点在している。
風景として捉えている家々は、そのひとつひとつが「生活」を静かに包み込んでいるのだ。
あのタワーマンションを見ろ。
何十、何百と無数に連なる窓のひとつひとつに、家族があり、ドラマがあり、生活があるのだ。
街は無数の生活の集合体である。
夕方の帰り道、そのことを実感する時。
集合体の一部であることに、不思議な安心感を覚えるのである。
…どうだ、変態ではなかっただろう。
まあ、男はみんな変態だし、さらに言えば人間はみな変態だと思っているのだが、その話はまた別の機会にすることとしよう。