ラーメン戦争
ラーメンという食べ物が好きだ。
かの有名な日清の創業者安藤百福は、戦後まもない頃のバラック屋台で売られていたラーメンを食べて感動したという。
主食の麺、主菜・副菜の具材、そして汁物のスープの三つを一杯で賄えるラーメンは、物が少ない戦後日本を支える完全食である。
そう考えた安藤は、以降ラーメンの普及に尽力したと言われている。
ラーメンは、偉大な食べ物なのだ。
さて、ここで一つ問題提起をしよう。
「ラーメン、どう書くか問題」である。
日本語という言語の冗長性は、しばしば同じものを表す言葉を複数生み出したが、ことラーメンに関してはそれが多い。
ラーメンだけでなく、らーめん、拉麺、中華そば、ramenと、実に様々な表記の方法があるではないか。
今日はこれらのラーメン表記について順番に考えてみようと思う。
①ラーメン
もっとも一般的な表記。
やる気のないサービスエリアの食堂で食べる380円くらいのラーメンから、
「兄ちゃん、文字の書き方一つでラーメンの味が変わるとでも言うのかい」
などと渋い声で言いそうな頑固店主のラーメンまで、幅広く用いられている表記だ。
非常にシンプルでありやや冷たい印象もあるが、イメージに幅を持った汎用性の高い表記であると言える。
②らーめん
あえてひらがなで書くことにより、少し柔らかい印象を持たせた表記。
黒Tシャツに白タオルを頭に巻き、黒地に白の筆文字で「一杯入魂」と書いてあるような店の店長は写真を撮る時絶対に腕を組むが、そういうところはらーめんと書きがちである。
たぶん思想とかなくてみんなやってるから何となくひらがなにしてるだけだと思う。
イマイチなラーメン屋はこの表記を使う傾向がある気がする。(もちろん美味しいお店もいっぱいある)
亜種にら〜めんがある。大して変わらない。
③拉麺
漢字で書くパターン。中華料理がメインだけど、ラーメンも出してますよ的お店に多いが、出現頻度は高くない。
「拉」という見慣れない漢字の醸し出す雰囲気もあいまって、中国4000年の歴史をどこか遠くに感じさせる。
山椒や八角など、本場のスパイスがビリビリ効いていそうだ。
④中華そば
これに関してはもはやラーメンではなく中華そばである。
ラーメンではない。中華そばなのだ。
色あせた赤い暖簾に、筆文字で「中華そば」と書いてある。
店に立つのは60過ぎのお父さんと、その奥さん。
床は少しベタベタしていて、歩くたびに靴底が少し張り付く。
そういう街の中華そば屋で、気だるい昼のニュースを見ながら、GABANのコショーをたっぷりかけても味がぼんやりしている中華そばをすする。
中華そばとは、そういうものである。
…オフィスの最寄り駅に着いてしまったので、今日は一旦ここまでとしよう。