六駅分のエトセトラ

家からオフィスまでの六駅で綴る何らかの文

あなたの食卓になりたい🎵

牛丼というのは、因果な食べ物である。

 

ひとたび街に出れば、あっちに吉野家、そっちに松屋、振り向けばすき家。あちこちに牛丼屋が点在している。(なか卯のことも忘れてはいけない)

 

街中に点在する牛丼屋からもわかるように、牛丼という食べ物は日本人にとってごく日常的な食べ物であり、ハレとケで言えば圧倒的にケであり、毎日でも紅しょうがをたっぷり載せてワシワシ食べられるシロモノなのだ。

 

そのため、価格は安い。大変に安い。あれ、1杯380円とかなのだ。ちょっと前は280円だった。圧倒的に安い。うまい棒ですら28本しか買えないし、なんなら最近は11円のところが多いから25本しか買えない。うまい棒25本などと言ったら、ハロウィンに訪問してきた子どもにあげようものなら、最近の目が肥えたガキどもは仮装を脱いでサッサとおいとまするだろう。

 

牛丼は安い食べ物である。

 

しかし、ちょっと冷静に考えてみると、牛肉というのは一般的に高いものだ。スーパーの精肉売り場に行けば、鶏肉、豚肉より牛丼の方が高いという事実を、10円安い卵パックのために5km先のスーパーに赴く目の肥えた主婦たちでさえ、至極当たり前のこととして受け止めているし、安い焼肉食べ放題に行けば、豚肉だけのコースが2500円なのに、牛肉も食べられるコースが3500円であるという事実に、牛のような胃袋を持った体育会系の学生たちは、一切何の疑問も抱いていない。そして奴らは豚肉を食らう。豚肉もうまい。うまければよいのだ。

 

そう、牛丼というのは、「高くて当然」の牛肉という食材をたっぷり使用した、「安くないとおかしい」料理なのである。

 

矛盾である。圧倒的矛盾。小学生でも鼻で笑うレベルの矛盾だ。

 

そりゃ、大手牛丼チェーンはライバル社の顔色を疑って値上げのチャンスを窺うだろう。だって、おかしいもん。一杯380円て。安すぎるもん。ワンオペしないと儲からないよ。そりゃ強盗も来るよ。

 

牛丼に限らず、世の中には「安くて当然」だと思われているせいで価格を上げられないものやサービスがわんさかある。その一方で、「高くて当然」と思われているおかげでえらい高く売ってもバカスカ売れるものもある。当然利益率にも雲泥の差があるわけだが、それぞれに違ったビジネスモデルがあり、どちらがいいとは一概には言えない。

 

ただ、安すぎるというのは、一時的には消費者は喜ぶが、長い目で見ればいいことではない。「いい」というのは誰から見た話なのかにもよってくるだろうと思うけども。

 

そして、僕は昨日も牛丼を食べた。牛丼はうまい。

 

ひとまず、うまいのでオーケーだ。